ブログ|キセラ川西オリヴィエのまえかわこどもクリニック 小児科

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ワクチンについて

2020年11月1日

今月の医師会の巻頭言に寄稿しましたので、その内容を一部抜粋して公開します。

皆さんはVPDという言葉を聞いたことがありますか?ワクチンで防げる病気(Vaccine Preventable Diseases)のことです。令和2年10月1日から乳児に対するロタウイルスワクチンの接種が公費化されました。法律の改定でワクチン毎の接種間隔も変更になり、ワクチンを接種しやすい環境がより整ってきました。

ロタウイルス胃腸炎は私が小児科医になった20年前から数年前まで、冬から春にかけてよくみかける胃腸炎でした。嘔吐、下痢、発熱を伴い、下痢は7日から10日程度続きます。脱水を呈して点滴を必要とする乳幼児が多いのですが、脱水の乳児ほど末梢静脈路確保が困難です。入院になった場合も感染力が強いため家庭内感染で兄弟が罹患し、一家全員同室入院なんてことになることもありました。合併症は脱水症だけでなく、軽症下痢に伴う痙攣や急性脳炎や脳症もみられます。このような小児科医泣かせの病気も任意ワクチン導入時期から減少し,今年はついに罹患した子どもを見ることはなかったです。コロナ禍での休校、休園、こまめな手洗い、うがい、マスク着用で感染の伝播が防げたのでしょう。定期接種化を契機にさらに接種率が上がることを期待したいです。

ロタウイルスワクチン以外のワクチンに目を向けるとまだ公費化されていないワクチンがいくつかあります。次に公費化して欲しいのはムンプスワクチンでしょうか。過去にMMR(麻疹、風疹、おたふく風邪)ワクチンによる無菌性髄膜炎が発生したために接種中止となって以降、ムンプスワクチンのみ任意接種のままです。ムンプスは自然感染すると感音性難聴の原因となります。2015-2016年の守本らの調査では片側難聴が287名、両側難聴16名とムンプス難聴の発生を認めています。発症年齢は5才から15才の時期に集中しており、潜在的にはそれ以上の発症例がいるといわれています。

あとは現在積極的勧奨を中止にしている子宮頸がんワクチンです。定期接種になっているのですが、2013年4月から定期接種化、2か月後の6月に積極的勧奨中止、2020年10月現在も変わっていません。北大のSharonらの調査では現在の接種率1%未満が続くと12才の女児は一生涯に3400-3800人が子宮頸がんに罹患、700-800名死亡すると推定されています。先日9価ワクチンが国から承認されたので、公費化、積極的勧奨の再開、そして接種率向上を願っています。

VPDは数多くありますが、現在COVID-19感染症も世界各国でワクチン開発が進められています。今後、COVID-19感染症がVPDとしてワクチン接種が必要な病気になるのか、ワクチン開発の推移を見守っていきたいと思います。私個人の意見では小児のCOVID-19感染症は重症化していないため、小児に対するCOVID-19ワクチン接種は不必要ではないかと考えています。